心理的安全性とは?高めるメリットや方法、測定方法を徹底解説!
「組織やチームの雰囲気が良くない」
「話し合いで誰も意見を言わないため、活発な議論にならない」
「チームや組織のメンバー同士の関係性が希薄である」
あなたはこのような悩みや課題を抱えていませんか?
これらの悩みは「心理的安全性」を高めることで解決できるかもしれません。
この記事では、心理的安全性の定義、心理的安全性の低い組織やチームの特徴、そして心理的安全性を高めるための6つの方法について解説します。
チームや組織の雰囲気を良くして、パフォーマンスや生産性を上げたいと考えている方は必読です。
心理的安全性とは?
「心理的安全性」は、1999年に組織行動学の研究者であるエイミー・エドモンドソン教授が発表した概念です。組織や集団の中で誰がどのような発言をしても認められて、参加者がありのままの自分をさらけ出すことができる状態のことを指します。
心理的安全性がある集団に身を置くと、参加者同士でオープンな会話がなされます。時には議論や言い争いになることもあるでしょう。しかし、このような環境はパフォーマンスや生産性を高めることにつながります。
つまり、良い組織やチームを作るためには、メンバーに心理的安全性を確保することが重要です。
職場や学びの場で心理的安全性を高める4つのメリット
職場や学びの場で心理的安全性を高めるメリットは、主に下記の通りです。
- 新しいアイディアが生まれやすくなる
- 深い学びが促進される
- 集中力やパフォーマンスが向上する
- 個人が抱える問題や課題を早期発見できる
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
新しいアイディアが生まれやすくなる
心理的安全性が高い集団は、どのような意見や考えでも受け入れてもらえるため、参加者はリラックスして会話を楽しむことができます。
これまでに思いつかなかった斬新なアイディアが生まれやすくなるでしょう。
深い学びが促進される
ディスカッションや活動が活発なチームは、テーマに対する理解度を深めて、話し合いの内容を記憶に留めやすくなることから、受け身で参加するよりも深い学びを得ることが可能です。
また、心理的安全性が担保されている環境は、仲間同士のつながりを強化して「学びの共同体」を作り上げ、メンバーの心身と社会的な健康の促進や認知機能の向上につながることも報告されています。
集中力やパフォーマンスが向上する
心理的安全性の高い組織やチームは、メンバーが自分の考えや気持ちを正直に話せるため風通しが良く、人間関係が良好です。このような環境で仕事や学習をすると、チーム内の人間関係に心を煩わされることがないため目の前のタスクに集中して取り組むことができます。また、周囲にも相談しやすいため、疑問や不安を早期解消することが可能です。
結果としてメンバー全員のパフォーマンスが向上することにつながります。
個人が抱える問題や課題を早期発見できる
心理的安全性が高いと、発言を控える必要がないため集団の中でコミュニケーションが活発になります。日常的にコミュニケーションを取っていると、相手のちょっとした変化や違和感に気づくことができ、情報交換も円滑に行うことができるでしょう。
つまり、報告・連絡・相談が自然に徹底されるため、個人が抱える問題や課題を早期発見しやすく、問題が深刻になる前に対処できる可能性が高まります。
心理的安全性が低い環境の特徴
心理的安全性が低い組織やチームには下記のような特徴があります。
あなたが属しているチームのことを思い浮かべて考えてみてください。
- ミーティング中に誰も質問をしない。
- チームのメンバーは自分のミスや失敗を認めようとしない。
- チームのメンバーは難しい会話や激しい議論になることを避けている。
- チームの誰かがミーティングや会議をコントロールしようとする。
- フィードバックをしたり、受けたりする機会がない。
- チームのメンバーをサポートするために、メンバーは自分が与えられたタスク以外のことを進んで行うことがない。
- メンバー同士で互いに助けを求め合うことがない。
- 会議や打ち合わせ中に意見の相違や、異なった角度からのアイディアがほとんどない。
- チームのメンバーは表層的な付き合いをしている。
当てはまる項目が多いほど、心理的安全性が低い環境です。
心理的安全性が低いと、組織やチームはミスや失敗を恐れるためパフォーマンスは下がります。やがて、その集団に身を置くことに不安を覚え、認知機能の低下や学習能力の低下などにつながることになるでしょう。
あなたの組織やチームの心理的安全性が低い場合は、次章の心理的安全性を高める方法を参考にして環境の改善を図ってください。
心理的安全性を高める方法
チームや組織の心理的安全性を高める方法は6つあり、下記の通りです。
- 互いの存在を承認して、感謝の気持ちを持つ
- 相手の意見を否定しない
- 失敗が認められる環境を作る
- 発言者に偏りが出ないようにする
- 話しやすい雰囲気を作る
- 明確な目標やゴールを設定する
ここでは、それぞれの心理的安全性を高める方法について詳しく解説します。
ぜひあなたの組織やチームに応用してください。
互いの存在を承認して、感謝の気持ちをもつ
心理的安全性を担保する上で、「インクルージョン(包摂)」は必要不可欠です。「インクルージョン」とは自分の属性やバックグラウンドに関係なく無条件で自分の存在が集団の中で認められて活躍できることを指します。組織やチームにインクルージョンが欠けていると、メンバーが疎外感を覚えたり、自分は無価値であると捉えたりしてしまう恐れがあります。
このような事態を避けるためにチームのメンバー全員に感謝の気持ちを持ち、その気持ちを表明することが大切です。相手から感謝されることで、それぞれのメンバーは自分の存在が承認されたと感じて安心感を覚えるでしょう。
相手の意見を否定しない
チームや組織の心理的安全性を高めるためには、誰もが話しやすい雰囲気を作ることが必要不可欠です。そのためには、チームのメンバーの意見や質問に対して否定したり、叱ったりしてはいけません。ポジティブな反応をして、どのような意見や考えであっても歓迎するようにルール作りをして、それをチーム内に徹底させてください。
突拍子のない意見や、的外れな意見もあるかもしれません。そのような意見であっても頭ごなしに否定するのではなく、「そのような考えもある」と一旦容認する姿勢を示すことが大切です。
結果として、活発で有意義な話し合いになり、メンバーの連携が強化されるでしょう。
失敗が認められる環境を作る
個人の成果だけが評価対象である環境にいると、メンバー同士が比較したり、ミスを恐れたりする集団になるリスクがあります。
メンバーからの「提案」や「挑戦」が評価されるように評価方法を工夫しましょう。そして、その新しい提案や挑戦がどのような結果に終わったとしても責めずに、努力を労ってあげてください。
このような環境を作ることでチーム内に前向きに次の挑戦に立ち向かったり、失敗を恐れずに新しい変化に飛び込んだりする空気感が生み出されるでしょう。
発言者に偏りが出ないようにする
チームや組織の話し合いの場面では発言者に偏りが出ないように注意してください。特定の人しか発言しないと、その人物が話し合いをコントロールしてしまう可能性があるからです。
チーム全員が1度は発言できることが理想ですが、難しい場合は会議の最後に全員が感想を述べる時間を設けることをおすすめします。
一見風通しの良さそうな職場であっても、話し合いの際には特定の人しか発言していないということはよくあることです。チームの新しいメンバーやシャイな人にも意見を述べてもらい、「発言することは楽しいことなんだ。」「発言しても拒絶されないんだ。」と認識してもらうよう心がけましょう。
話しやすい雰囲気を作る
メンバー間のつながりが心理的安全性を作る上で最初に重要なポイントになります。そして、メンバー間のつながりは表面的なものであってはなりません。相手に心を開かず、相手との関係性を築き上げようと努力しないことはチームのパフォーマンスや生産性の低下を招くからです。
下記の点に留意しながら話しやすい雰囲気作りを心がけてください。
- 自分が呼んでもらいたい名前でメンバーを呼び合う
- 顔色が優れないメンバーに積極的に声をかける
- チームの話し合い以外の場面でも他のメンバーと話す機会を設ける
- 無理強いせずに、個人の考えや価値観を尊重する
- 相手の目を見て話すように心がける
- 毎日互いに挨拶をする
- 話し合いの際には意図的に雑談を組み込む
- 話し合いで他のメンバーが発言している時には、相槌を打ちながら聞くように心がける
このような工夫を凝らすことで、メンバー間の関係性が重層的なものになるでしょう。
明確な目標やゴールを設定する
心理的安全性を作り出すために、チームの目標やゴールを設定することも効果的です。そしてチームの協力によってその目的やゴールが達成されることで、チームに対する印象がポジティブなものに変わり、より居心地の良い環境を作ることにつながります。
心理的安全性を測る7つの質問で定期的に効果測定を行おう!
心理的安全性は、チームや組織のメンバーの気持ち次第であるため数値で測るのはかなり難しいです。
しかし、心理的安全性を発表したエドモンソン教授によると、下記の7つの質問に対するチームメンバーの回答で心理的安全性の高さをある程度数値で計測することができると言われています。
1. チームの中でミスをすると非難される。
2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
3. チームのメンバーは、自分とは異なるメンバーを拒絶することがある。
4. チームに対してリスクのある行動を取っても認めてもらえる。
5. チームのメンバーに助けを求めづらい。
6. チームのメンバーは誰も、自分の仕事を故意に貶めるような行動をしない。
7. チームのメンバーと作業をする際には、自分のスキルと才能が尊重されていると感じる。
これらの質問に対して、1「全くそう思わない」から7「非常にそう思う」の数字で評価してもらいましょう。
数字が高いほど心理的安全性が高く、数字が低いほど心理的安全性が低いということがわかります。
もし、心理的安全性が低いことが判明した場合は、上述の心理的安全性の高め方を参考にしてみてください。
心理的安全性を高める上で注意すべき点
心理的安全性を高めることは組織やチームにとって重要なことではありますが、下記の2点に注意してください。
- 馴れ合いにならないようにする
- 相手に過度に気を使いすぎないようにする
ここでは、それぞれの注意点について詳しく解説します。
馴れ合いにならないようにする
「心理的安全性が高い=誰もが自分が考えていることを自由に発言することができ、それが受け入れてもらえる=仲良しでゆるい組織・グループ」と考える人がいるかもしれません。
しかし、その考えは間違っています。
心理的安全性の向上の目的は、心理的安全性が低いチームや組織に発生する下記のリスクを予防することです。
- 組織やチームのためには言うべきことであるのに、批判されるのが怖くて言えない
- 上司のイエスマンにならないと不機嫌になってしまう
- ミスや失敗が査定に響くと困るので、新しいことにチャレンジしない
- チーム内の人間関係が悪いため、助けを求めることができずタスクや悩みを1人で抱える
- 皆に叱られるのが怖いので、ミスや問題を隠している
心理的安全性を高めることは決して仲良しでゆるい組織や集団を生み出したり、メンバー同士で馴れ合いになったりすることを目指したものではありません。
メンバーが気兼ねなくのびのびと仕事や学習する環境を提供し、パフォーマンスや生産性を高めることが最終目的であることを忘れないでください。
相手に過度に気を使いすぎないようにする
これは特に心理的安全性が高まり、その安全性をキープしようとしている集団が注意すべきポイントですが、メンバー間の関係を悪化させないようにするために相手に過度に気を使いすぎることがあります。
エドモンソン教授によると、心理的安全性と責任のバランスを取ることが大事で、それぞれの高低によって、チームや組織の在り方は下記の4つのいずれかに変化すると提唱しています。
1. 心理的安全性が低く、責任感も低い=「無関心」のチームになる
2. 心理的安全性が高く、責任感が低い=「快適」なチームになる
3. 心理的安全性が低く、責任が高い=「不安」なチームになる
4. 心理的安全性が高く、責任感も高い=「学習意欲の高い」チームになる
目指すべき姿は4番です。定期的に前章で紹介した心理的安全性を測る7つの質問をメンバーに行い、自分たちの組織やチームがあるべき姿を維持できているか見つめ直すことが大切です。
まとめ:心理的安全性を高める方法を活用して、居心地の良い学習環境を作ろう!
この記事では、下記の心理的安全性を高める6つの方法について解説しました。
- 互いの存在を承認して、感謝の気持ちを持つ
- 相手の意見を否定しない
- 失敗が認められる環境を作る
- 発言者に偏りが出ないようにする
- 話しやすい雰囲気を作る
- 明確な目標やゴールを設定する
組織やチームの心理的安全性を高めることで、メンバーが安心感を覚えてのびのびと自分らしく振る舞うことができ、結果としてパフォーマンスや生産性を高めることにつながります。ぜひ、上記の心理的安全性を高める方法をあなたの組織やチームで実践してみてください。