コラム

CEFRとTOEICの違い|法人研修でどちらを使うべきか

多くの企業は、理由があってTOEICを選んだわけではありません。ただ、引き継いだのです。現在の研修担当者が着任した時点ですでに採用基準に入っており、昇進要件にも入っており、表計算ソフト上の数値でもあり、改めて問い直す理由がありませんでした。

ところが、その問いは自ずと再浮上します。社内基準を満たした社員が会議で固まる。ある部署の平均スコアは上がっているのに、海外との議論の進み方は変わらない。この段階で有用な問いは、TOEICが良いテストかどうかではありません。測っているものが、必要としているものかどうかです。

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そもそも種類が違う

比較すると混乱しがちなTOEICとCEFRですが、両者はそもそも異なるカテゴリーに属しています。そのことを理解すると、違いがはっきり見えてきます。

TOEICはテスト

日本企業の多くが導入しているTOEIC Listening & Readingは、受験者の理解力を測定するテストです。出題形式は「聞く」「読む」「解答する」の3つで構成されており、話す力や書く力は問われません。

TOEIC Speaking & Writingという別のテストも存在し、実施方法も採点方法も独立していますが、企業での活用例はListening & Readingに比べると限定的です。

CEFRは参照枠組み

一方のCEFRはテストではなく、参照のための枠組みです。2001年に欧州評議会が公開し、2020年には補遺版が加わって記述内容がより充実し、「仲介(mediation)」という新たな観点も追加されました。

CEFRはA1からC2までの6段階で構成され、各段階は「何ができるか」という具体的な行動記述(Can-Do記述)によって示されています。

CEFR自体は試験ではありませんが、さまざまな語学試験の結果をこの枠組みに対応づけたり、評価者が個人の能力をいずれかの段階に位置づけたりすることは可能です。つまりCEFRは、能力を語るための共通言語のような存在といえます。

TOEICは数値を出力します。CEFRは記述(段階と行動記述)を出力します。この「数値か、記述か」という違いこそが、両者の比較を難しくしているすべての根本にあります。

TOEIC(L&R)CEFR
位置づけテスト参照枠組み
測定するものリスニングとリーディングの理解力4技能にわたって「何ができるか」
出力スコアA1〜C2の段階と行動記述
適した用途選抜、採用時の基準値、社外との比較プログラム設計、目標水準の設定、進捗の報告
実施安価に大規模実施でき、評価者は不要段階の判定には訓練を受けた評価者が必要

TOEICが適している場面

TOEICには、枠組みにはできないことがいくつもあります。

規模に対応できます。大人数への実施は安価かつ迅速で、訓練を受けた評価者を必要としません。採用パイプラインの選抜や、部門全体のおおまかな基準値の設定であれば、受験者一人あたりのコストで並ぶものはありません。

比較可能です。スコアは企業をまたいでも年度をまたいでも、おおむね同じ意味を持ちます。これは採用や、社外との比較を要する場面で効いてきます。

理解されています。候補者も知っており、管理職も知っており、取締役会向けの資料で説明を加える必要がありません。

書類選考の段階で、多数の応募者の中から検討に値する英語力を持つ人材を絞り込みたい場合、TOEICはその問いに的確に答えてくれます。

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スコアが実態を見誤らせる場面

問題が生じるのは、その選抜用の道具を研修設計に使ったときです。

理解力の高いスコアは、産出について多くを語りません。 Listening & Readingで高得点を取りながら、会議を始めることも、サプライヤーに異議を唱えることも、顧客に聞き直すこともできない、という状態は十分にあり得ます。テストがそうした能力を測定していない以上、スコアがそれを反映しないのは当然です。

スコアは、能力以外の理由でも変動します。 受験形式への慣れは得点を押し上げます。3回目の受験者は、形式を理解している分、1回目より高い点を取ることがよくあります。これをプログラムの成果として読むと、実際の変化を過大に評価することになります。

基準スコアの設定は、誤った安心につながります。 特定のスコアを社内基準に設定すると、それを満たしていながらも英語で実務をこなせない社員が生まれます。その社員は求められた要件を果たしているに過ぎません。要件そのものが、測るべき対象を誤っていたのです。

CEFRが加えるもの

この枠組みが記述するのは、テストの成績ではなく「行動」です。

CEFRの記述文は、定められた状況下で何ができるかを示します。たとえば、論旨を崩さずに主張を貫く、不慣れな話題にも対応する、第三者間で交わされる速いやり取りについていく、といった具合です。こうした記述は社員が実際に行う業務と重なるため、管理職は段階を読むだけで、その社員に何を期待できるかを把握できます。

産出力もカバーしています。 話す力と書く力は、別途購入する追加テストではなく、枠組みそのものに組み込まれています。

職務と結びつけることができます。 営業職にはこの水準、エンジニアリング職にはこの水準、というように設定でき、どちらの記述も単なる目盛り上の区切りではなく、観察可能な業務そのものを表します。

業務そのものを表します。

ただし、この結びつけを機能させるには条件があります。 訓練を受けた評価者を介さずに割り当てられたCEFRの段階は、単なるラベルにすぎません。CEFRという枠組みを本当の意味で活かすには、スコアだけでは不十分で、訓練を受けた評価者によるフィードバックが欠かせないのです。

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判断の種類で使い分ける

多くの企業は両方を維持したうえで、互いの役割を押しつけ合うのをやめるべきです。

TOEICは、選抜、採用時の基準値、社外との比較可能性が必要な場面で使います。この用途では効率的です。

CEFRは、プログラム設計、目標水準の設定、進捗の報告に使います。来月の会議でその社員に何ができるかを知る必要があるとき、記述された段階のほうがスコアよりも的確に答えます。

両者は矛盾なく共存します。ただし、非公式な換算表で一方を他方に対応づけることは避けてください。おおよそのスコア換算表は広く流通していますが、その多くは誰かの推定です。対応づけが必要であれば、テスト提供元または欧州評議会が公開しているものを使い、それでも近似値の「参考」として扱ってください。

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残る問い

CEFRを社内に導入すると、より難しい問いがすぐに立ち上がります。それは、自社では「各段階が各職務にとって何を意味するのか」、という問いです。

B1は能力を記述したものです。それが要件になるのは、カスタマーサポート職には必要でアカウントマネジメント職には必要でない、と自社が決めた時点です。その判断は枠組みではなく企業側にあり、誤れば、不適切に設定したTOEICの基準値と同じ問題が生じます。

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段階を適切に設定するには、記述文が実務上何を意味するのか、各段階までの現実的な期間はどの程度か、自社で満たせない基準を設定しないためにどうするかを把握しておく必要があります。これはより長い議論であり、全社基準を発表する前に済ませておく価値があります。

CEFRとTOEICの選択は、見た目ほど難しくありません。自分がどちらの判断をしているのかを問うてください。選抜にはスコアを、プログラム設計には「何ができるか」の記述を使います。

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