流暢さを超えて:英語トレーニングが文法ではなく自信に焦点を当てるべき理由

日本では、英語を使うことは今でも多くの人にとって大きなハードルと感じられています。特にビジネスの現場では、英語を使う場面が増えているにもかかわらず、「間違えてはいけない」「文法を正しく使わなければ」という意識が根強くあるのも事実です。実際、英語をある程度理解できる人は多いものの、自信を持って英語で発言できる人は限られています。
この背景には、長年続いてきた「正確さ中心」の英語教育があります。もちろん、文法や語彙は基礎として重要です。しかし、それだけでは実際のコミュニケーション力は育ちません。グローバルなビジネスの現場では、完璧な文法よりも「自信を持って自分の考えを伝えられるか」が、成果を左右する大きな要素になっています。
自信は単なるスピーキング力とは異なります。それは「間違えても伝えようとする勇気」や「発言しても大丈夫だという安心感」など、心理的な側面を含んでいます。日本の職場では正確さを重視するあまり、間違いを恐れる傾向が強く、結果的に発言を控えてしまうケースが多く見られます。この「話すことへの躊躇」が、個人の成長だけでなく、チーム全体のコミュニケーション力や生産性にも影響を与えています。
人事・研修担当者にとって、この課題は「英語教育をどう設計するか」を見直す良いきっかけとなるでしょう。文法の正確さに偏ったトレーニングから、実際に英語で「話せる」「伝えられる」ための自信を育てるトレーニングへとシフトすることで、社員一人ひとりの力を最大限に引き出すことができます。
流暢さよりも大切な「自信」
多くの日本人ビジネスパーソンは、英語を「知識の習得」として学んできました。文法のルールを理解し、語彙を増やすことに熱心ですが、その結果「話せるようになる」前に「間違えてはいけない」という不安が先に立ってしまうことがあります。
実際のビジネスコミュニケーションでは、多少の文法ミスがあっても意思疎通ができる人の方が、正確でありながら発言を控える人よりも成果を上げる傾向があります。1977年のClémentらの研究によると、「言語能力の自己評価の高さ」と「不安感の低さ」が第二言語学習のモチベーションと努力を左右する重要な要因であるとされています。つまり、文法力が高くても、自分に自信がなければ発言できず、実際のコミュニケーション能力は発揮されないのです。
また、1996年のNoelsらの研究では、「L2(第二言語)における自信」は、自己のコミュニケーション能力に対する認識と低い不安感の組み合わせであると定義されています。つまり、「間違っても大丈夫」という安心感があることで、学習者は積極的に英語を使おうとするのです。
このように、英語教育のゴールを「正確さ」から「伝える力」に切り替えることで、社員は完璧さに縛られず、実際の場面で英語を使う意欲を持つようになります。
「自信のギャップ」が生まれる理由
日本の学習者が英語を話すことに躊躇する大きな理由の一つが「間違いを恐れる気持ち」です。正確さを重んじる文化の中では、小さなミスでさえ恥ずかしく感じたり、自分の能力を過小評価したりする傾向があります。
さらに、同僚や上司など、周囲との比較によって自信を失うケースも少なくありません。研究によれば、他人との比較(social comparison)は、学習者の自己効力感や自信に大きな影響を与えるとされています。自分の英語力を他人と比べ、「自分はまだ話すレベルではない」と感じてしまうことが、発言の機会を奪ってしまうのです。
こうした「自信のギャップ」は、知識不足ではなく、心理的な障壁から生まれます。文法や語彙の理解が十分でも、「間違えたらどうしよう」という思いが強い場合、発言する勇気を持てないことが多いです。その結果、英語を使う機会が減り、上達のスピードも遅くなるという悪循環が生まれます。
この課題を解消するには、「間違えてもいい」「失敗しても大丈夫」という安全な学習環境をつくることが重要です。安心して挑戦できる環境があれば、学習者は自然と積極的に英語を使い始め、実際のコミュニケーション能力を伸ばすことができます。

企業が見落としがちなポイント
多くの企業が導入している英語研修プログラムは、文法や語彙を中心とした「知識の定着型」です。しかし、現場で求められているのは「実際に英語で意思疎通できること」です。例えば、メールは正確に書けても、会議で自信を持って意見を述べることができない社員は少なくありません。
Clémentら(1994)の研究によると、英語力に自信を持っている人ほど英語を学ぶ意欲が高く、積極的に学習する傾向があり、自己信頼感(self-confidence)に繋がることが示されています。つまり、たとえ完璧でなくても自分の英語力に自信を持っていると、実際に使いこなすモチベーションを高めるのです。
企業研修では、この「自信」の育成がしばしば見過ごされています。文法を正しく覚えることに重点を置くあまり、社員が「話してもいい」「間違ってもいい」と感じる環境が作られていないケースが多いのです。その結果、知識はあるのに使えない「受け身型の英語力」にとどまってしまいます。
自信を育むことを中心に据えたトレーニングでは、文法を軽視するわけではありません。むしろ、文法を「伝えるためのツール」として捉え、心理的なサポートを通じて発言のハードルを下げます。これにより、社員は間違いを恐れずに発言でき、グローバルなチームでも積極的に意見交換を行えるようになります。
「自信重視型」英語研修の効果
自信を育てる英語学習は、学習者の自己効力感を高めると同時に、学習への主体性を引き出します。このアプローチでは、完璧さを求めるのではなく、「伝える勇気」と「継続する意欲」を重視します。
社員が自分の英語力に自信を持つことで、会議で意見を述べたり、海外拠点とのプロジェクトに積極的に参加したりするようになります。結果として、コミュニケーションが活発になり、チーム全体の生産性やグローバルチームとも協働する力が高まります。
また、心理的な安心感が得られることで、英語を使う際の不安や緊張も軽減されます。間違いを気にするよりも、「どうすれば伝わるか」に意識が向くようになり、学習者の成長サイクルが自然に回り始めます。
企業にとっても、単なる語学研修を超えた価値を生み出します。自信を持って発言できる社員は、国際的なやり取りにも柔軟に対応し、ビジネスの現場で実践的な成果を出せるようになります。つまり、自信を育てることは、個人の成長だけでなく、組織全体の競争力向上にも直結するのです。
COMASのアプローチ
COMASでは、「自信を育てることが英語コミュニケーションの鍵である」と考えています。日本人ビジネスパーソンが直面する「話す勇気の欠如」「間違いを恐れる心理」「実践する機会の不足」といった課題を解決するために、私たちは「心理的安全性」と「実用性」を軸にしたトレーニングを提供しています。
COMASのトレーニングでは、実際の職場シーンを想定したロールプレイやディスカッションを通じて、学んだ表現をすぐに使えるようにします。単に知識を増やすのではなく、「実際に使うことで身につく英語力」を重視しています。
さらに、学習者が安心して挑戦できる環境を整えることを大切にしています。間違いを指摘するのではなく、そこから学び、改善するプロセスをサポートする——それがCOMASの基本姿勢です。この「心理的安全性」があるからこそ、学習者は自信を持ち、自分の言葉で英語を使うようになります。
その結果、社員は「文法的に正しい英語」だけでなく、「自分の考えを伝える力」を身につけ、組織全体のグローバル対応力を高めることができます。COMASは、社員一人ひとりが自信を持って世界とつながるためのサポートを続けています。
まとめ
効果的な英語トレーニングとは、文法の正確さを追求することではなく、実際に英語を使って「伝えられる」ようにすることです。多くの日本人が抱える課題は、知識の不足ではなく、「話す自信」の欠如です。
自信を中心に据えた英語トレーニングは、学習者が積極的に発言し、間違いを恐れずに挑戦する姿勢を育てます。文法を無視するわけではなく、「伝えるための道具」として活かすことで、より実践的な英語力が身につきます。
そして、この変化は個人の成長にとどまらず、チーム全体の活性化、国際的な協働の促進、そして企業のグローバル競争力の向上につながります。
自信は単なるスキルではなく、グローバル社会で成果を出すための「土台」です。社員が安心して英語を使える環境を整えることで、企業は新しい可能性を引き出し、より豊かなコミュニケーション文化を築くことができるでしょう。
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